AIは発明者になれるのか?

以前、「AIを使った発明は特許になるのか?」という記事を書きましたが、今回はその発展形ともいえる話題です。発明をしたのが人間ではなくAIだったら、そのAIを「発明者」として特許は取れるのでしょうか。この問いを世界に投げかけたのが、米国のターラー博士が開発したAI「DABUS」です。博士は、DABUSが自律的に生み出したとされる発明について、DABUSを発明者とする特許出願を世界各国で行いました。「AIは発明者たりうるか」を各国の特許庁と裁判所に問いかける壮大な実験といえます。結果はどうだったか。ほとんどの国で、この出願は却下されています。理由は共通していて、特許法上の「発明者」は自然人(人間)であるという解釈です。例外は2つだけ。実体審査を行わない南アフリカでは登録に至り、ドイツでは人間を発明者と記載した上で「AIに発明を生成させた」と付記する形なら認められるとして、審査に差し戻されました。日本でも同じ争いがありました。特許庁が出願を却下したのに対し、出願人がその取消しを求めて提訴しました。東京地裁は、知的財産基本法が知的財産を「人間の創造的活動により生み出されるもの」と定めていることなどを踏まえ、特許法上の発明者は自然人に限られるとして、請求を棄却しました。この判決は、AIがした発明の扱いについては立法による制度設計の議論が望まれると付言したことでも注目されました。控訴審の知財高裁も、一審の結論を支持して控訴を棄却しています。「発明者は人間」という結論は、世界的にほぼ固まりつつあります。ただ、実務家として重要なのはここからです。日本の裁判例では、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与した者が発明者とされてきました。AIを道具や補助として使う限りは人間が発明者といえますが、発明の核心部分までAIが担ったと評価されると、特許による保護が難しくなるおそれがあります。その線引きは、まだ明確ではありません。AIを使って生まれた成果を特許にしたいという相談は今後確実に増えていくはずです。当面の実務としては、開発の過程で人間がどのような着想・判断・工夫で貢献したのかを記録に残しておくことが、将来への備えになると考えています。